SIer SEと比べ、社内SEは納期に追われることも無いので生活にゆとりがあると言われ、人気があります。
一方、「社内SEになるのはやめとけ」と言う声もあり、躊躇されている人もいると思います。
筆者はSE5年、社内SE15年、働いています。その経験から得られた社内SEのメリット・デメリットを説明します。
本記事では以下の内容について説明しています。
- 「社内SEはやめとけ」と言われる理由
- 社内SEのやりがいや魅力
- 社内SEに向いている人
- 社内SEへの転職方法
「社内SEはやめとけ」といわれる理由4点
社内SEはやめとけと言われている理由は大きく以下4点です。
- ITスキルが身に付かないため、新卒者は注意が必要
- 業務は社内調整・運用/保守の比重が大きい
- 事業会社での位置付けはコストセンターになりがち
- SIer在籍者と比較すると転職には不利
社内SEをやめておけ、の理由についてここで詳しく説明します。
ITスキルが身に付かないため、新卒者は注意が必要
所属企業の大小によって業務内容は異なりますが、社内SEでは管理・保守運用業務が中心となるため、プログラミング等の基礎スキルを身に付けることができません。
そう言った基礎スキルの有無がベテランになって管理業務を行う際に大きな差を生みます。ベテランになってプログラミングスキルもなく、システム企画やシステム開発のプロジェクトマネジメントはできません。
そのため、新卒で社内SEになるキャリアはおすすめできません。また、転職市場でも評価されません。
業務は社内調整と運用・保守の比重が大きい
社内SEがSIerのSEと最も異なる点はIT企画に携われることです。
一方、IT企画でシステム開発やサービス導入を行う際、社内調整にかなりの時間を取られます。開発はITベンダに委託して、運用/保守は自社で行います。
そのため、業務内容は社内調整と運用・保守の比重が大きくなります。
社内SEが開発を行うことはほとんどありません。
事業会社での位置付けはコストセンターになりがち
筆者が富士通からリクルートには転職した際に最も違いを感じたのはこの点です。
SIerでSEは商品のような位置付けなので必然的に社内での立ち位置は高くなります。一方で事業会社の社内SEは収益に貢献しない部門と言う意味でのコストセンターと言う位置付けになりがちです。
DX等のIT活用において社内SEは重要な役割を果たすはずですが、経営者の意識が追い付いていないと言う面はあると思います。
SIer在籍者と比較すると転職には不利
筆者は2回転職を行っています。その中で痛感したのはSEと比較すると社内SEのキャリアに対する評価は高くないことです。
社内SEよりもSEの方が転職市場における評価が高い理由は技術力だと考えられます。自社で不足する人材を転職市場から獲得するため、調整業務中心の社内SEへの需要は大きくないと考えられます。
転職によるステップアップを考えている方は社内SEではなく、SIer SEに転職することをおすすめします。逆に最後の転職のつもりと腹を括った場合は社内SEに転職するのも良いと思います。
やめとけは本当? 社内SEの5つの魅力
筆者はリクルートと現在の会社2社合計で15年以上、社内SEとして働いています。その魅力は主に以下5点です。
- システムの企画から運用保守まで一気通貫で携われる
- 全社に対して大きな影響力がある
- ワークライフバランスを取りやすい
- 社内のユーザから感謝される機会がある
- 幅広い経験や知識を得る機会がある
筆者は20年以上、IT系の仕事をやっていますが、システムは開発よりも企画が大切だと考えています。どうやるか(HOW)よりも何をやるのか(WHAT)が大切だと。
筆者は富士通時代、官公庁部門に所属していました。官公庁システムには数百億円程度を掛けたにもかかわらず、全く使われていないものが山のようにあります。
代表的な例としては住基ネット(マイナンバーカードの前身)がありますが、全費用は1兆円を超えるそうですが誰も利用していません。これは極端な例ですが、企業レベルでも多額の費用を掛けたにもかかわらず、全く使われないシステムは多数あります。
これらの原因はシステムの目標・目的と言った企画フェーズが失敗していることにあると考えています。そう言った意味で社内SEはシステム企画から携われることが筆者にとっては魅力の一つになっています。
システムの企画から運用保守まで一気通貫で携われる
システムのライフサイクルを企画・開発・運用保守に分けるなら社内SEはその全てに携わることができます。筆者が社内SEに最も魅力を感じる点です。
システムの企画から運用保守まで一気通貫で担当すると、リニューアルする際にはこの点を改善しようなどと色々とアイディアが湧いてきます。こう言ったPDCAを回して良いものを生み出していくのが本来のシステム開発の在り方ではないかと思っています。
また、ノーコードなどプログラミングを行わない開発手法が注目される中、最上流のシステム企画の重要性は増すばかりです。
全社に対して大きな影響力がある
全社で利用するシステムやインフラ基盤の導入は社内SEの意見で決まります。この点は大きなやりがいに繋がると思います。
承認権限は部長・本部長・役員等が持っていますが、社内SEの起案を追認するような形になることがほとんどです。質疑もコスト関連が多くを占めます。
費用対効果を説得できれば、社内SE主導で様々なサービス導入も可能です。
システム関連は社内SE以外の人は分からないので、実質的に大きな決定権を持つことになります。
ワークライフバランスを取りやすい
残業時間は会社次第ですが、SIerやWeb系よりは事業会社の社内SEの方が遥かにワークライフバランスを取りやすいのは間違いありません。その理由は顧客が社内なので融通が効きやすいからです。
不夜城と言われていた頃の富士通で、筆者は残業を一か月300時間以上したことがあります。現場前のホテルに寝泊まりする毎日でした。
SIerはプロジェクトとして請け負う場合、着手時に納期等の条件について契約書を取り交わします。しかし、契約書にないことを依頼されることも多く、断れないと仕事が膨らみますが納期は変わりません。そのため、残業でカバーするしかなくなるのです。
また、Web系のリクルートでは、深夜2時まで資料を作成するようなことが多々ありました。会社にいなくても仕事のメールを深夜までやり取りすることが普通でした。
一方、現在の会社では残業は月1時間程度です。毎日、定時に帰宅しています。年収も富士通やリクルートよりも遥かに良いです。
筆者はワークライフバランスと言う点で特に現在の生活に満足しています。
社内のユーザから感謝される機会がある
社内SEはヘルプデスク業務を兼務する会社も多いと思いますが、ちょっとしたPCのトラブルシューティングを行うだけで感謝されます。
SIerでは文句を言われることは良くありましたが、感謝されることはほとんど、ありませんでした。
リクルートのWeb系サービスでは顧客と接する機会がなかったので当然、感謝される機会はありません。稀にアンケート結果を共有されるくらいでした。
社内SEは社内ユーザが顧客で身近なので感謝される機会が多いこともやりがいの一つだと思います。
幅広い経験や知識を得る機会がある
SIerやWeb系では専門特化することも多いので、狭く深い経験や知識を得られます。
一方、社内SEは大企業を除くと一人で様々な業務を兼任するのが普通なので幅広い経験や知識を得る機会があります。
幅広い経験・知識がシステム企画を行うのに役立ちます。
社内SEに向いている人
社内SEはSIerのSEやWebエンジニアとは全く異なる点が求められます。
社内SEに向いている人の特徴は主に以下2点です。
- 技術志向ではなく、システム企画に興味がある人
- コミュニケーションスキルが高く、ITを素人にも分かりやすく説明できる人
これらについて以下説明します。
技術志向ではなく、システム企画に興味がある人
社内SEはシステム開発やインフラ構築等をSIerに外注することがほとんどです。そのため、技術を極めたいと言う人には向いていません。
一方、システム企画をやりたい人には向いています。
ただし、システム企画を行う時間よりも既存システムの保守・運用を行う時間の方が圧倒的に長いですよ。
コミュニケーションスキルが高く、ITを素人にも分かりやすく説明できる人
この点が最も重要です。
SIerでは顧客からもITが分かる人が出てくるため、ある程度、普通に会話できます。
一方、社内SEが社内でコミュニケーションを取る相手はITの素人です。そう言った素人にも分かるようにITを説明して納得してもらう必要があります。
特に新システム導入時などは承認権限を持つ年配の役職者に説明する必要があるので骨が折れます。こう言ったことが嫌いな人は社内SEには向いていません。
そのため、SIerのSEよりも高い資料作成能力を求められることが多いです。
社内SEに向いていない人
社内SEに向いていない人の特徴は以下2点です。
- 開発を行いたい人
- 社内政治ができない人
1点目を望む人はSIerやWEB系(自社開発)の方が良いでしょう。2点目について社内SEが好きな人はほとんどいないと思いますが、業務を行う上では必要になります。それぞれの特徴について以下説明します。
開発を行いたい人
社内SEはITを使って何を行うのかを検討するIT企画やシステム・インフラ運用が業務の中心です。
社内SEが開発を行うことはありません。
開発を行いたい人や技術志向の人は社内SEではなく、SIerやWEB系(自社開発)の方が向いているでしょう。
社内政治ができない人
社内政治が得意な人はいても好きな人はいないと思います。しかし、社内SEの最も重要な業務であるIT企画を社内で通すには人間関係や社内政治が重要になります。
社内の意思決定では、「あいつがそこまで言うなら」と言う信頼関係が重要になるケースが多々あります。そう言った社内政治ができない人は社内SEには向いていないと言えます。
社内SEに必要な経験・スキル
社内SEに必要な経験・スキルは以下の3点です。
- 開発経験
- インフラ運用経験
- 資料作成・プレゼンテーション力
社内SEに求められる重要な2つの業務はベンダーコントロールとIT企画です。上記3つのスキルのうち、1・2点目はベンダーコントロールに必要なもの、3点目はIT企画に必要なものです。
開発経験
社内SEに求められる重要な業務であるベンダーコントロールとは、SIerへの発注管理のことです。開発プロジェクトなら発注からシステムリリースまでベンダーとコミュニケーションを取り、指示していくことを求められます。
このときに、開発プロジェクトなら開発経験がなければ指示も調整もできません。
SIerも顧客の社内SEがITの素人だと思えば、思うようには動いてくれなくなります。社内SEは開発を行いませんが、開発経験を持っていた方が良いのです。
インフラ運用経験
インフラ運用経験もベンダーコントロールに必要です。
ネットワーク・サーバー等のインフラ構築のプロジェクトを行う場合、最低限、インフラ運用経験はあった方が良いでしょう。インフラ構築経験があれば良いのですが、最低限、インフラ運用経験があれば、要件整理やプロジェクト管理も行えます。
ただし、開発経験とは違い、こちらは社内SEになってから経験を積めば対応可能です。
資料作成・プレゼンテーション力
IT企画を通すための社内調整に必要なスキルが資料作成・プログラミングスキルです。
分かりやすく、ITの素人が読んでも理解できる内容を専門用語を使わずに平易に説明することが必要になります。専門用語を多用した説明だと「何を言っているのか、分からない」と言う反応になるためです。
ただし、資料作成・プレゼンテーション力は社内SEになってからでも十分に身に付きます。
社内SEに転職するには?
社内SEは求人自体が多くありません。
そのため、広く網を広げて魅力的な求人がないかを探す必要があります。おすすめは転職エージェントと転職サイトを併用利用する方法です。
リクルートの調査によると、転職活動の成功者は平均3.4の転職エージェントに登録していました。
おすすめの転職エージェントのおすすめ3点セットは以下の通りです。
1位:doda
【公式】https://doda.jp/
筆者の3年に渡る転職活動を支えてくれた面倒見の良い業界No2の転職エージェント
2位:リクルートエージェント
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